家族

バタネン西川 著

先日、帰省したときのこと。

田舎に着き、帰路の途中でホームセンターに寄り、

ブームが過ぎて安くなっていたキックボードを購入。

そのキックボードに乗って実家に着くと、まず母が反応した。

母は乗ってみたいと言い、タイムを競って遊んでいた。

そこへ姉が仕事から帰ってきて、その輪に参加。

少しすると修理に出していたテレビが配送され、

家の中へ運び込むのを手伝い、母も対応の為に家に入った。

姉がひとり、家の前でキックボードで遊んでいる。

私は勇気をふりしぼり、運び終えたテレビと、

なにやら話をしている母と業者の人を家に残し、

姉のもとに向かった。

そして、「タイム測ろっか?」「お母さんはすぐに乗れたよ」

など、姉に声をかけ、ふたりで会話をした。

実に10年ぶりの会話。


中学生の頃、つまらないケンカと意地の張り合いから

お互いを無視して、避けて続けていた。

伝えることがあっても、必ず母が中継に入り、

ここ10年間直接を会話をしたことがなかった。

他から見ると、たあいのない姉弟の会話だが、

お互い感じたことのない緊張に包まれていたはず。

そして、それを目にした母はきっと感動していただろう。

更に父も家から引っ張り出し、一家4人で はしゃいでいた。

家族水いらずで、あんな楽しかったのは記憶にない。

これから先も、ないかもしれない。


流行が終わり、処分価格で売られていたキックボードが、

値を付けられないステキな想い出を生んでくれた。

 

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